平成24年度税制改正要望意見
全国青色申告会総連合
[最重点項目]
[1]事業主報酬制度の早期実現
個人企業経営者の所得には勤労性が存在します。しかし現在のわが国には、
個人企業経営者の勤労性所得を認める税制上のしくみがありません。
一方、個人企業と経営実態を同じくする同族法人企業の経営者に対しては、
役員報酬の支払いが認められています。資本金500 万円未満の法人企業の
77.4%(平成21 年「会社標本調査」国税庁)は、役員報酬を支払うこと等によ
って法人税の納税額がゼロ(欠損法人)であるといわれています。また平成22
年度税制改正により、いわゆる「一人オーナー会社」の役員給与に対する損金
不算入措置が廃止されています。
個人経営の事業所数は、平成8 年から同21 年の13 年間に、1,063,121 事業
所が減少しています(総務省統計局)。さらに世界的な金融恐慌以降、個人事業
主のおかれた経営環境は厳しい状況下にあります。またわが国は人口減少社
会・少子高齢化社会の到来により、とくに地方においては、一段と高齢化・過
疎化がすすんでいます。
このような状況のもと地域経済社会にあっては、個人企業の役割が今後も必
要不可欠であることは明らかです。あわせて長期にわたる経済不況により個人
企業の活力が大きく失われています。個人企業と同族法人企業との税負担格差
も拡大しています。税制は公平でなければなりません。
適正な記帳にもとづいて申告をおこなっている青色申告者の勤労性所得を正
当に評価し、給与所得控除の適用を認めた事業主報酬制度の導入を、一刻も早
く実現するよう強く要望します。
[2]個人企業における事業承継税制の創設
地域社会への貢献と日本経済の持続的成長を促すためにも、個人企業の継続 と発展の観点から、事業用資産を非課税とする事業承継税制の確立が図られる よう強く要望します。 ※「均分相続への問題提言」別紙参照
[3]簡易課税制度の事前届出制の省略
「消費税簡易課税制度選択届出書」の事前届出制を省略し、当該課税期間の 確定申告期にその確定申告書で対応できることとし、あわせて従来の2 年継続 適用については1 年にすることを強く要望します。
[4]その他税制に関わる事項
(1)青色申告特別控除10 万円を30 万円に引き上げ
現行の青色申告特別控除10 万円は、昭和47 年に青色申告控除10 万円として 創設され、40 年近く据え置かれています。青色申告特別控除10 万円を30 万円 に引き上げることを強く要望します。
(2)固定資産税、とくに償却資産の取扱いの改善
償却資産に対する免税点を基礎控除にあらため控除額(現行150 万円)を大 幅に引き上げること、また申告期限を3 月15 日(現行1 月31 日)にするとと もに、所得税の確定申告をおこなった場合には、償却資産の申告書の提出を省 略できるようにすることを強く要望します。
[5]税務行政に関わる諸手続の簡素・合理化
電子政府の実現等、IT を活用した税務行政の時代が到来しているなか、各種 届出書等の廃止を含めた手続の簡素化等、抜本的な見直しをおこなうことを強 く要望します。
[その他の重点項目]
《 国税関係 》
1.所得税
青色申告特別控除
- 青色申告特別控除65 万円の記帳要件を緩和すること。
- 青色申告特別控除65 万円の適用要件を満たしている者の場合、期限内申 告の青色申告特別控除額が65 万円未満であっても、修正申告等による所 得の増加部分(不正所得を除く)についても65 万円までの青色申告特別 控除額を容認すること。
- 不動産所得のみで青色申告をしている者について、その貸付規模がいわ ゆる事業的規模でなくても、その他の適用要件を満たしていれば青色申 告特別控除65 万円を認めること。
青色事業専従者給与
- 青色事業専従者給与の届出制を廃止すること。
減価償却
- 減価償却の対象とならない少額の減価償却資産について、取得価額基準 を60 万円(現行10 万円)未満とすること。
- 旧定額法または旧定率法により償却費を計算するさいに、取得価額の 5%相当額を一括して必要経費に算入できるようにすること。
- 定率法の改定取得価額を一括して必要経費に算入できるようにすること。
所得控除
- 65 歳以上を対象とした高齢者控除50 万円を創設すること。
- 雑損控除の適用にあたってその損害金額の計算を簡便な方法(現行「被 災直前の資産の時価」による計算)にするとともに、その繰越控除期間 を5 年間(現行3 年間)に延長すること。
- 医療費控除の計算にあたり適用される控除額、「10 万円」または「総所 得金額等が200 万円未満の場合は、その5%相当額」について、「10 万円」 を「5 万円」に、「5%相当額」を「2.5%相当額」に引き下げること。
- 平成23 年分から適用されている扶養控除ならびに障害者控除の改正を、 それぞれ改正前に戻すこと。
- 現行の配偶者控除を堅持すること。
- 青色事業専従者であっても、所得要件を満たしていれば控除対象配偶者 または扶養控除の対象者として認めること。
- 特定の寡夫控除額(現行27 万円)を特定の寡婦控除額35 万円と同額ま で引き上げること。
- 基礎控除額を50 万円(現行38 万円)に引き上げること。
その他
- 雑所得にかかわる公的年金等控除額を引き上げること。
- 既存住宅の取得にかかわる住宅借入金等特別控除の築年数制限(現行20 年以内[耐火建築物は25 年以内])を撤廃または緩和すること。
- 分離課税の長期譲渡所得について、概算取得費を譲渡収入金額の10% (現行5%)相当額とすること。
- 各種所得の金額の計算上算出された損失の金額については、青色申告を している場合、その損失金額は損益通算を認め、損益通算後に残った損 失金額は、純損失として繰越控除の対象とすること。
- 所得税における青色申告の純損失の繰越控除期間を5 年間(現行3 年間) とすること。
- 更正の請求期間を法定申告期限から5 年以内(現行1 年以内)にするこ と。
- 不動産の貸付けを事業的規模でおこなっているかどうかの判定基準(い わゆる形式基準「5 棟10 室」)を大幅に緩和するとともに、年間の不動 産収入500 万円以上を事業的規模とするなど新たな基準を設定すること。
- 長期および短期譲渡所得の課税の特例について損益通算と繰越控除を復 活すること。
- 白色申告者と青色申告者は現行どおり明確に区別されるべきであり、白 色申告者に記帳が義務化され記帳水準が向上したとしても、現行の専従 者控除の適用にとどめること。
- 電子帳簿保存法の適用を受けるための承認申請の期限を、個人の場合は 所得税の確定申告期限までとするとともに、申請書ならびに添付書類の 大幅な簡素化をはかること。
- 教育ローン減税を創設すること。
- 個人事業者がおこなう共同募金会などへの指定寄附金は、法人と同様に その全額を必要経費とすることができることとすること。
2.相続税・贈与税
- 400 ㎡以下の小規模な土地について、相続税を非課税(いわゆる「坪数 控除」)とすること。
- 個人企業の事業承継の円滑化をはかるため事業用資産の生前贈与につい て、相続時まで課税を繰り延べる生前贈与制度を創設すること。
- 贈与税の居住用土地建物の配偶者控除を3,000 万円(現行2,000 万円) に引き上げること。
- 贈与税の基礎控除額を200 万円(現行110 万円)に引き上げること。
3.消費税
- 税率5%を維持すること。
- 事業者免税点1,000 万円を引き下げないこと。
- 事業者免税点制度の判定については基準期間による制度をあらため、当 該課税期間の課税売上高にもとづいて判定する制度とすること。
- インボイス、複数税率など個人企業の納税代行事務の負担が過重となる 改正をおこなわないこと。
- 住宅の貸付けによる不動産収入のみの場合など非課税売上げだけの事業 者であっても、その課税仕入れに対して仕入税額控除(還付請求権)を 認めること。
- 請求書等の保存を前提に帳簿への法定記載事項を簡素化すること。
- 課税対象から酒税、たばこ税等を除くこと。
- 所得税と同様の延納制度を創設すること。
- 納税者の任意により予定納税ができるようにすること。
- 各種届出書について、その必要性と提出期限等の見直しをはかること。
4.イータックス
- 現行の電子証明書等特別控除を電子申告控除とあらため恒久化するとと もに、当該年分の所得税ならびに消費税の確定申告をイータックスによ りおこなう場合、それぞれ5,000 円の税額控除をおこなうこと。
- イータックスをおこなうさいに、住民基本台帳カード等による電子署名 を省略するとともに、そのしくみを大幅に簡素化すること。
5.その他
- 印紙税を廃止すること。
- 揮発油税の現在の税率水準(旧暫定税率相当)を本則税率に戻すこと。
- 自動車重量税を廃止すること。
《 地方税関係 》
1.固定資産税および都市計画税
- 商業地にかかわる固定資産税と都市計画税の大幅な負担軽減をはかるこ と。
- 土地の評価方法については、土地の収益率と変動する地価の動向を踏ま え、収益率と公示価格にもとづいた新しい評価方法を導入すること。
- 小規模住宅用地ならびに小規模事業用地にかかわる固定資産税と都市計 画税の大幅な負担軽減をはかること。
- 取得価額30 万円未満の少額減価償却資産を固定資産税の課税対象から 除くこと。
2.個人住民税
- 各種所得控除を所得税と同額にすること。
- 所得割の税率(現行一律10%)を最低税率5%とする累進課税にすること。
- 前年所得課税を所得税と同じく現年所得課税とすること。
3.個人事業税
- 事業主控除額を500 万円(現行290 万円)に引き上げること。
4.その他
- 地方揮発油税ならびに軽油取引税の現在の税率水準(旧暫定税率相当) を本則税率に戻すこと。
- 自動車取得税を廃止すること。